待ち合わせは、彼が転勤する前に二人でよく行った、平岸の珈琲店になった。

石造りの倉庫を改良して作られた珈琲専門店。

私も、哲哉も、カフェ巡りが好きで、円山に集中するカフェスポットからちょっと離れたここは、隠れ家的な感覚で気に入っていた。

−−ここで、よく。

二人は将来を話した。

誓った。

彼は、私との未来のために、頑張るんだと言って札幌を出た。


ミシミシとなる木製の階段を昇って、二階に席をとると、懐かしいぬくもりをお尻から感じた。


待ち合わせの、10分前。

記憶を呼び起こし、あの頃の幸せな日々に巻き戻されるには、充分な時間だった。