ラブ☆ヴォイス

歩いて5分のスーパー。もっと遠いところにしたかったような気がしないでもないけど、あっくんのお腹が空いてるのだったら可哀想だしと思って近場で安いスーパーにした。そんな帰り道。

「ねぇあっくん。」
「なんだ?」
「あっくんってこういうところ普通に来ても大丈夫なの?」
「芸能人じゃねぇしな。顔の露出も知ってるやつは知ってるけど、なレベルだろ。」
「そっかぁ…。」
「だからお前みたいな奴の方が稀だよ。」
「え?」
「顔見ただけで一発で俺のことが分かるとか、逆に怖い。」
「あたしは怖くないっ!」
「んなこたぁ分かってる。」

 あっくんはこういうところでずるい。変なところで唯の気持ちをふわっと持ち上げる。

「にしてもスーパーって安いのな。」
「え?」
「自分で料理とかしねぇからあんま行かねぇし。」
「普段のご飯は?」
「適当に外食したり、弁当だったり。」
「不健康ー!」
「だからお前が作ってくれるやつが意外と健康的だったりするわけ。」
「…っ…。」

 唯の頬が不意に熱くなる。…あっくんはずるすぎる。唯の気持ちを受け取ってくれないのに、傷付けて遠ざけてもくれない。どっちつかずの距離でいるしかないのに。