でも待って。今…可愛いって言った?華音さん可愛いって…。

「今可愛いって言った?」
「その後のセリフ聞いてた?『先生』は『華音』のこと可愛いっつってるけど、先生役の俺は華音の真似して喋ったお前を可愛いとはこれっぽっちも思ってないっつったけど?」
「きゃー!すっごい幸せ!いい夢見れそう!」
「…だから、お前は人の話を聞けって。」
「え?聞いてるよ?あっくん上手だった。ドキドキしてるもんっ!鳥肌だって立ってるし。今は完全にあっくんだけど、さっきまではホントのホントに『先生』だった。」
「当たり前。プロだし。」
「プロのホンモノのワザ、聞かせてもらっちゃいましたー!ありがとう!ホントにホントにありがとう!」
「どーいたしまして。約束だから、いい加減酔っ払いは寝ろ。」
「はぁーい!」

 唯は素直にベッドに直行した。さっきまで自分が寝てただけあってぐちゃぐちゃだ。帰る時は綺麗にしてから帰らなくては。
 パタンと部屋のドアを閉めてふぅーっと深呼吸。ホンモノのワザは破壊力が大きい。

「アニメ…楽しみ。」

 先生の台詞を言ってくれたあっくんの声を、頭の中で思い出しては一生懸命何度も繰り返す。そうしているうちにいつの間にか、唯は夢の世界に旅立っていた。