唯が指差した吹き出しは『こうしていれば、音は聞こえないでしょう？』という名台詞だ。雷を怖がる華音という主人公を心配して駆け付けた先生が、華音を優しく抱きしめながら耳を塞いでくれるという、先生ファンの女子の心を鷲掴みのシーンである。

「言ったらベッドで大人しく寝るか？」
「寝るっ！」
「言ったな。」
「言いましたっ！」
「じゃあ正座しろ。」
「はいっ！」

　姿勢を正して正座する。

「一度しか言わない。」
「分かってますっ！」

　言ってくれるだけで本当に自分は世界一幸せな女の子になれる。

「心して聴け。」
「りょーかいですっ！」
「何で敬語だよ？」
「なんとなくっ！気合いの関係で。」
「バカな奴。」

　あっくんがまた笑う。笑ってくれるのならば、バカな奴でもなんでもいいやなんて思ってしまうのは、唯が正真正銘のバカだからではあるけれど。いいんだ。今はただのバカな奴で。