「それだけ言って…彼氏の…言葉…待たずに切った。
…でも、電話は来な…かった。」

「そう…ですか…。」

「はぁー…バカみたいよね…ホント…。」


腕で目を強くこすって、涙を振り払う綾瀬さん。
…こういうところ、すごく強い。
だけど…


「…泣いていいんじゃないですか?
無理して涙拭わなくても…今俺しかいないし。」

「え…?」

「いつだって強い綾瀬さんでいる必要、俺はないと思います。
弱くなる時だってあるし、ていうか弱くなっていいんですよ。」

「でも…。」

「泣き顔晒すの嫌なら、ちょっと出ましょうか?」

「向坂…?」


俺は食べ終わったてりやきバーガーの袋をたたみ、ゴミ箱にゴミを流し込んだ。
そして彼女の華奢な腕を掴んで外へと出る。





「向坂!どこに…。」

「行くあてはないですけど…とりあえずどうぞ。」

「え?」

「乗り心地、そんな悪くないと思います。
乗ったら掴まってくださいよ?」


俺が指をさしたのは、俺の愛車の後部座席。
愛車という名のチャリだけど。