「あっ…これ…。」

 見覚えのある便箋。封筒はテーブルの端にギリギリ乗っている。この手紙は…あの日に…

「覚えてんの、お前?」

 肘をさするあっくんの手が止まる。そして唯の顔をじっと見つめる。

「おっ…覚えてるに決まってるよっ!だってこれっ…。」

 だってこれは、始まりだから。あたしが気持ちを伝えた、始まりの…言葉。

「そう。お前がくれた手紙。…ファンレターを越えて、もはやラブレターだったけど。」

 あっくんが唯から離れ、そっと手紙を拾う。そして手紙を持ったまま、唯の隣にすとんと座った。

「『御堂明博様6月24日のミドソラの放送、聴きました。』
「ちょっ…読まないでっ!」
「なんだよ?俺がこの超美声で読んでやるっつてんだよ。」
「恥ずかしくて死んじゃうよっ!やめてーっ!」
「やだ。お前が読んでくれるっつーならやめるけど?」
「へっ?」

 あっくんが意地悪くにやりと笑う。