* * *

「…指示とかいらないじゃん!あっくん、元々器用だし。」

 ぷぅっと頬を膨らませて、隣で鍋の準備をする唯。…ったく、表情をコロコロ変えて…だから飽きないんだよ、俺は。そう心の中で呟いた。

「終わったぞ、これはもう入れんのか?」
「大根は先ー!大根ちょうだい?」
「ああ。」

 切った大根を鍋に入れてやる。不意に下から視線を感じる。

「…なんだよ?」
「んー…やっぱりあっくん、器用だなぁって。あたし、今みたいに料理が作れるようになるまで結構かかったのに。」
「俺ができんのは切るのだけだ。味付けは…あんまできねぇし。」
「そっかー!じゃあそこはあたし、あっくんに勝てるんだ!」

 にっこり笑ってそういう唯。…ま、そういうことになるな。

「味付けは任せる。お前の味が落ち着くし。」
「え?落ち着く…ってどゆこと?」

 …この激ニブ女め…!ストレートしか伝わらないというのはなかなかに困る。

「言葉通りに飲み込めよ。」
「安定してるってこと…?」
「まぁ、それもある。」

 調子に乗りそうだからこれ以上は言わないでおくことにする。