ラブ☆ヴォイス

 翌朝、唯は大学に行くべく玄関のドアを開けた。昨日の飴を受け取ってくれたのか、確認しなくては。

「じゃあ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい。」

 今日は2限からであるため、いつもより少し遅めの出発だ。ドアを閉め、右隣の部屋を見てしまうのは、もはやクセでもある。今日は確認したいこともあるから余計に凝視気味。

「あ…。」

 いないはずの人が目の前にいると、どうしてこんなに間抜けな声が出てしまうのだろう。玄関の前に立っていたのは、いつもならそこにいない人。

「…あっくん。なんで…?」
「これ、やる。」
「え、うわっ!」

 放り投げられたのは一粒のチョコレート。ギリギリのところでなんとかキャッチする。

「な…なんで…チョコ…?」
「質問ばっかだな、お前。」
「え?」
「なんでしか言ってないぞ。」
「だってあっくんがいて、しかもチョコくれるとか意味分かんないもん!」
「意味分かんなくないだろ。昨日自分が何したか思い出せ。」
「あ…!」

 昨日の自分は、あっくんの家のドアに袋を掛けた。のど飴とメモ入りの小さな袋だ。それが今はなくなっている。