「…っ…!」

 顔を元に戻そうとするのを感じ、頬に手を添えることで阻止する。

「!?」
「逃がさねぇよ?」
「えっ…っ…。」

 ぎゅっと固く瞑った瞼の上にそっと口づけた。固く瞑りすぎだ。どれだけ警戒しているのか。
 わざと音を立てて唇を離した。ようやく固く閉ざした瞼を開けて、明博の方を見上げる。その瞳はもちろん潤んでいる。こうして見ると、リスとかに似ているような気がしないでもない。

「…これ以上無理っ…。」
「はぁ?」
「心臓壊れる…。」
「んじゃ壊せ。」
「死んじゃうよっ!」
「心臓止まったら俺が心臓マッサージしてやるよ。あと、人工呼吸もな。」
「へっ!?」

 心臓を抑えたまま、目をぱっと見開く。…なんだよ、期待してんのか?なら、期待に応えてやらねぇとな、なんて思う悪戯心に火がついた。
 明博は手を頬に添えたまま、ゆっくりとまたその距離を近付けた。

「あ…あっく…。」

 名前を呼ぶ声すらも飲み込むように、唇はそっと重なった。