ラブ☆ヴォイス

「…なんだ?顔が気持ち悪い。」
「いやー可愛い子じゃん。ユイちゃん。つーかよっぽど好きなんだな、お前の声。」
「そうだな。」
「あ、そこ否定しないんだ?」
「好きじゃなきゃ気付かねぇだろ。こんな些細な変化。」
「確かに。」

 もうそこの部分を否定する気にもなれない。
 明博は唯から貰ったのど飴を一つ口に放り込んだ。レモンの味が妙に酸っぱい。

「…すっぺぇ…。」
「ビタミンC摂取しろってことじゃね?風邪予防ってことで。俺にも1個ちょーだい。」
「誰がお前なんかにやるか。」
「ユイちゃんから貰ったからって大事にしすぎー!」
「んなんじゃねぇよ。『俺』が貰ったからな。誰にもやりたくないだけだ。」
「あっくんってさー時々そういうワガママなとこあるよねー。」
「お前にだけは言われたくない。つーかあっくんって呼ぶな、いい歳して。」

 からかいたげな表情を浮かべたタツを見ないフリして、明博は玄関のドアを開けた。やはりレモン味ののど飴はのど飴というよりはただの飴で、ひたすらに酸っぱさだけが口に残った。