「お…い…お前泣くなって…マジで。」
「だっ…だって…ホントに…?」

 潤んだ瞳…もとい、もうボロボロの状態でそう問いかける。…お前さ、もう少し顔に締まりが必要だと思うぞ?

「ホントに。だけどもう言わねーけど。」
「な…言ってよ…!」
「一度しか言わねぇからこそ価値があんだろ。」
「あ…あたしはいっぱい言ってるもんっ…!」
「ありがたく受け取っておくよ。」
「そんなのずるいっ…。」
「そんなに言葉が聞きたけりゃ、適当に俺が出てるアニメでも見ろ。」
「えぇー!嫌だよそんなのっ…!」
「贅沢なやつ。」
「へ…?」
「言葉の代わりにこうしてやってるんだろ?」

 明博は抱きしめる腕に力を込めた。一瞬身体を竦める唯のリアクションが面白くて仕方がないからこそ笑みが零れる。

「愛情表現ってやつだよ。」
「なっ…!」

 たったこれだけでこんなにも顔を赤くする。…大丈夫なのかよ、こんなんで。つーか別に抱きしめただけだっつーのに。

「顔赤いって。それに身体熱くね?」
「あっくんのせいだから!」
「知ってるって。分かってやってるっつってんじゃん。」
「あたしで遊ぶのやめてー!」

 そう言ってぐるんと明博に顔を向けた唯は完全に忘れている。後ろを向けば、顔が近付くということを。またしてもゆでダコ状態だ。