* * *

「おぉーここがお前の新居かぁー!」
「うるせぇっつーの。今何時だと思ってんだよ。」
「悪い悪い。向こうでオッケー?」
「ああ。」

 ミドソラ収録後、タツは当然のように押しかけて来た。もう2時は越えている。

「おーい!面白いもん見っけたー!」
「…だからうるせぇって。なんだよ?」

 部屋のドアに目をやると、小さな袋がかかっている。どう見ても女っぽい袋だ。犯人は奴しかいない。犬みたいな…あいつ。

「これが噂のユイちゃんだろー?」
「…ったくお前に話した俺がバカだった。大体、ラジオなんかで俺の隣の家に俺のファンが住んでて素性ばれましたなんて言ってみろ。とんでもねぇことになんのが分かんねぇのか?」
「悪いって。あれはつい口が滑ったんだって。」
「…滑りすぎだ。」
「で、何入ってんの?」

 タツにそう言われて袋の中に手を伸ばした。

「のど飴。」
「今日声変だったもんな、お前。」

 違和感はあった。今日の朝から喉が少し変だということは微かに分かっていた。もちろんあいつに話した覚えはない。むしろ会ってもいない。