『一旦自宅戻ってハニメロの漫画全巻持って行くっつってんの。』
『…まだ片付いてない。』
『それも手伝う!』
『絶対ダメ。』
『つーか俺は見たいんだよあの子が!』
「えっ?」

 あの子とはどの子だろう?…最悪のケースを想像して、サーッと血の気が引く。あっくんの家には彼女でもいるのだろうか。

『…お前…。』
『っと…お前んちのあれ…だよな、えっと…わんこ。』

 …わ、んこ?唯のマンションはペット禁止である。そもそもあっくんが犬を飼い始めたなんて知らない。聞いてもいない。そんなことしてたら追い出されてしまうのは明白だ。そんな唯の焦りをよそに、あっくんはけだるげに言葉を続けた。

『そーそー。わんこだわんこ。』
『名前、なんだっけ?』

 しばしの沈黙。

『…ユイ。やんちゃすぎて手焼いてる。』

 今の、聞き間違いじゃないよね、あたし。