「女は怖いわよー萱原さん。好きな男を傷付けられたってことぐらいでコーヒーかけちゃうんだから。」

 華は席を立った。伝票を卓真がすっと取る。

「というわけで、これに懲りて少しは反省して下さい。ご自分の言動がいかにアホだったかを。それと祥さんも、自分がいかにバカを放置してきたか、ぜひとも反省して下さい。ま、祥さん自体もバカなのかもしれないけど。それでは。」
「…華、言い過ぎ。」
「甘ったれにはこのぐらいで丁度いいのよ。いつかあたしに絶対感謝する羽目になるわ。」

 御堂明博の同業者ってことはおそらく自分たちよりも年上だろう。こんな年下の人間にこれだけ言われれば、嫌でも少しは反省するはずだ。赤の他人がたくさんいる前でこんなこと言われたわけだし。
…ドンマイ、萱原。それと祥も。少しは同情するわ。

 二人はお金を払って店を出た。うー…暑い。もうちょっと長居する気だったのに、唯のバカ!

「ったくお前なぁ…。」
「なによー卓真だっていらっとしたでしょ?」
「まぁ確かにはぁ?とは思ったけど…。唯ちゃんがああしたし、お前も色々言ったから俺の出る幕は無かったな。」
「ちょっと面白かったわよね、唯。」
「お前もな。…でも、もう少し言葉選べよ。あんまり相手の神経逆撫でするようなこと言うな。」
「あら?随分保守的な言葉ね。」
「…危ねぇだろ…。男だし、殴られたりするかもしれねぇんだぞ?」
「だって卓真が隣にいたじゃない。危なくなんかないでしょ?あんたなら守ってくれるじゃない、絶対。」

 華はしれっと言い放った。