店に取り残されたのは華、卓真、そして萱原に祥だった。沈黙が続く店内で、一番先に口を開いたのは華だった。
「あーあ。随分派手にやったわよねー…あの子。」
「…確かに。萱原さん、でしたっけ?あ、これで拭いてください。」
卓真がテーブルに置いてあったティッシュを差し出す。そんなものじゃ拭ききるはずもないほどにびしょ濡れだ。
萱原は苦々しげに表情を歪めている。それもそのはずだ。あんなちびっこにコーヒーをかけられて、挙句説教までされているのだから。
「あたしも卓真も詳しい事情はぜーんぜん知らないけど、それでもあなたの言い分が間違ってることくらいは分かるわよ。怒りでかなり呂律とかやばかったけど、あの子が正論。あなたは根本的に間違ってる。もっと簡単な言葉で言うと、コーヒーかけられて当然、よ。」
萱原は何も言わない。もちろん彼女である祥も何も言わない。まったく、あたしまでむかむかしてくるじゃないと華は心の中で呟いた。
「何も言わなければ事が穏便に済むだなんて思わない方がいいわよ、祥さん?」
彼女がびくっと身体を竦ませた。そんなに声色変えてないのに、びくびくしすぎよ。華はこのテの女が大嫌いだ。
「言ったら嫌われるとか思ってるんでしょうけど、こんな男になら嫌われたっていいじゃない。言いたいことも言わずにびくびくしてるなんて、現代の女性の生き方には合わないと思うけど。さーて、もう出ようか、卓真。」
「言いたいこと言って帰るとか、お前も相当な悪だよ。」
「あらーそう?だって言われて当然な人は甘んじてその言葉を受けるべきよ。先に人を傷付けたんだから。」
唯は間違ってなどいない。唯の大切な人を傷付けた。それは唯が怒る、充分な理由になる。
「あーあ。随分派手にやったわよねー…あの子。」
「…確かに。萱原さん、でしたっけ?あ、これで拭いてください。」
卓真がテーブルに置いてあったティッシュを差し出す。そんなものじゃ拭ききるはずもないほどにびしょ濡れだ。
萱原は苦々しげに表情を歪めている。それもそのはずだ。あんなちびっこにコーヒーをかけられて、挙句説教までされているのだから。
「あたしも卓真も詳しい事情はぜーんぜん知らないけど、それでもあなたの言い分が間違ってることくらいは分かるわよ。怒りでかなり呂律とかやばかったけど、あの子が正論。あなたは根本的に間違ってる。もっと簡単な言葉で言うと、コーヒーかけられて当然、よ。」
萱原は何も言わない。もちろん彼女である祥も何も言わない。まったく、あたしまでむかむかしてくるじゃないと華は心の中で呟いた。
「何も言わなければ事が穏便に済むだなんて思わない方がいいわよ、祥さん?」
彼女がびくっと身体を竦ませた。そんなに声色変えてないのに、びくびくしすぎよ。華はこのテの女が大嫌いだ。
「言ったら嫌われるとか思ってるんでしょうけど、こんな男になら嫌われたっていいじゃない。言いたいことも言わずにびくびくしてるなんて、現代の女性の生き方には合わないと思うけど。さーて、もう出ようか、卓真。」
「言いたいこと言って帰るとか、お前も相当な悪だよ。」
「あらーそう?だって言われて当然な人は甘んじてその言葉を受けるべきよ。先に人を傷付けたんだから。」
唯は間違ってなどいない。唯の大切な人を傷付けた。それは唯が怒る、充分な理由になる。



