「その様子じゃ、御堂から何にも訊いてないみたいだね。…ってことはやっぱり彼女じゃないんだね、君。」
「……。」

 だからそうだと言ったのに、抉られたような気持ちになる。

「萱原くん…。」

 祥が萱原の服の裾を引っ張る。それでも萱原は止まらない。

「じゃあさ、早く御堂の彼女になってあげなよ。そうすれば御堂も祥への未練とか完全になくなったってことになるし、祥も気が楽になるだろうし。」

 何を、言ってるんだろう、この人…。あっくんの彼女になってやれ?そんなのこの人に言われる筋合いなんてない。
 あっくんが祥に未練があったとしても、この人には関係ない。だってそれはあっくんと祥、二人の問題だから。
 祥の気が楽になるかどうかなんて、全く問題ではない。そんなことは心底どうだっていい。あっくんの恋愛は祥の気持ちを楽にするためにあるんじゃない。あっくんの恋愛は、もっと自由にあるべきなのに。
 唯は半分ほどアイスコーヒーが残ったグラスを持った。

バシャッ…!


「何すんだよ!」


 その中身を思いっきり萱原の顔にかけることに、唯は何の躊躇もなかった。