「おぉ、御堂にも彼女できたんじゃん。随分若い子みたいだけど。」
「別に彼女じゃねーよ。隣人だ。」
「照れんなって。なぁ、祥?」
「……。」

 彼女はただ頷くだけだった。多少はまだ、罪悪感があるのだろう。

「お前が幸せそうで良かったよ。これで祥も罪悪感感じなくて済むようになるし。」
「…仁くんっ…!」

 彼女が萱原のシャツの裾を引っ張った。異様な空気を感じてか、唯は何も言わない。

「ごめんねっ…もう、行くね。」

 彼女は萱原の手を握って、足早に、逃げるように去って行った。



 暑すぎる空気の中、残されたのは明博と唯だけだった。