ラブ☆ヴォイス

「それで…唯ちゃんは声優のお仕事に興味があるの?」
「あ…そうじゃなくて…。」
「?」

 問われていることの意味は分かる。声優のお仕事に興味があって連れてきてもらうとかがおそらくは一般的であろう。自分のような形で見学に来るなんて、邪道だ。そう思った瞬間に流れてきたのは…

『華音さん、ずっと聴いていたんですね。』

あっくんの声ではない。もう『先生』の声だった。甘く響く優しい声に耳だけじゃなく、目も奪われる。その声がなんだか目で見えるような気がした。

『ば…ばれてたの?』
『もちろんですよ。でもコソコソしている華音さんが面白かったので弾き続けました。』

 あっくんの表情が少しだけ見える。口元が優しい。微笑んでるのが頬の感じで分かる。

『ちょっ…あたし、バカみたいじゃん!』
『そんなことありませんよ。それに、演奏を途中で止めてしまうのも何だか気がひけたので。僕の演奏を聴いてくれてありがとうございました。華音さんに聴かれてるって思うと少し緊張してしまいましたが…。』

 温かく耳に届いて唯を溶かす、魔法の声。

「どうやら『夢』ではなく『恋』みたいね。」

 春風先生がにこっと笑った。