「海!!綺麗な海が見たい!!」

「分かった。」


海ならここから30分くらいで着く。

今日は天気もいいし…
まぁ海に入るにはちょっと寒いかもしれないけど。



俺の隣でずっと外を眺めている理沙子。

信号が赤になるとついつい彼女の横顔を見てしまう。


「ん…何?せんせ…じゃなかった。さ…聡。」

俺の目線に気付いた彼女がそう言った。

彼女は3年経った今でも、「聡」となかなか呼べないでいる。
「先生」が抜けない。

「よく言えました。」

俺は彼女の頭をポンポンと叩く。

「なんか…先生のほうがしっくりくるような気がするんだけど…。」

「はぁ?」

「先生って呼ばれるの嫌なの?」

「嫌じゃないけど…
好きなやつには名前で呼ばれたいもんだろ普通。
お前だって『お前』って呼ばれるより『理沙子』って呼ばれた方が嬉しくない?」

「そりゃ…そうだけど…。」

「ってことで頑張れ理沙子。
普通に『聡』って呼べるようになれよ。早く。」