「…風?」


「あ…あれ。おかしいな」


不意に廊下で立ち止まる私を、ちぃちゃんがキョトンとして見つめる。


…聞こえる。


あれ、何で?






耳を澄ますと、


いつも私が三国くんと練習している曲が、聞こえてきた。


うっそぉ。


三国くん、今日練習しないとかいいつつ、ちゃっかり自分は練習してるんだ!?


許せな~い!


いつの間にか、三国くんに教えられるというよりは、自主的に歌いたいと思うようになっていた私。


家にはピアノもギターもないし、第一自分では弾けない。CDをかけて練習しても、生演奏で得られる気持ち良さがない。