「遅くなりました」



息を切らして入ってきたのは、「いかにも」といった派手なスカジャンを着た若い男だった。



「…遅い。9時と言ったはずだけど」



崇文は、さっき見たはずの腕時計を、わざとらしく若い男の前でチラリと見た。



針は午後9時25分をまわっている。



25分の遅刻。



若い男は、



「すんません」



と言って、左手に持った携帯を振ってみせた。



「でも、きっと気に入ってもらえる情報、仕入れてきたんで」



それを聞いて、崇文と千晶は、瞬時に表情を変えた。



ふたりの様子を見た若い男は、したり顔でニヤリと笑った。