そもそも新入社員の案内は、総務部の担当だったはず。

千晶は営業部の人間だ。

研修資料を作らされたうえ、今度はコレかと思うと、ややうんざりした。



(もう、なんで私が…)

千晶は、仕方なく『小山』と紹介された男性を見上げた。

「はじめまして、木村です」

190センチはあろうかと思われる長身を前にすると、千晶はこれでもかと首を上げるしかない。



小山は30代後半といったところだろうか、ほど良く日に焼けていて健康的な印象の男性だった。

身長のわりに圧迫感は感じず、スラリとブランド物のスーツを着こなしている。



「はじめまして、小山徹です」

ウッドベースのように、低くて響きのいい声。

笑顔も爽やかで、これは…。



(モテそう…)



さりげなく左手の薬指をチェックしてみたが、指輪はなかった。

(でも、しない人も多いしね)

千晶は、自らが作成した研修資料が置かれたデスクに、小山を案内した。