たとえばあなたが




「……これで…?」

「そのために、ずっと俺を探してたんだろ」

千晶は、おそるおそる手を伸ばし、紙袋を開けた。



何か、ゴツゴツしたものが入っている。

蛍光灯の光は紙袋の底まで照らしてはくれず、千晶は袋を逆さにした。

ゴトリと鈍い音をさせて床に転がり落ちた物体が、ふたつ。



ひとつは、大きな登山ナイフ。

被せられていた革のケースが少しずれて、蛍光灯の光を浴びた刃が鋭く輝いている。



もうひとつは、刑事ドラマで見るような小さな拳銃だった。

ナイフはともかく、銃なんて見たこともない。

千晶には、それが本物かどうか知る術はなかった。



「これ以上ないチャンスじゃないか。やっと現れたんだから」



(…また、あの顔…―)

松田はまた、さっきの顔で笑っている。

嘲るような、蔑むような。

挑むような顔で。



「それで俺を撃て」