千晶はこの地下室で、初めてはっきりと小山の顔を見た。
小山は、いつもと変わらない、やさしい表情をしている。
どうしてそんなに穏やかでいられるの…―
そう思ったとき、千晶の目から涙が溢れた。
「こんなところで、会いたくなかった」
寒さと哀しさで震える声が、小さく響く。
「ごめん」
「どうして?」
「…え?」
「どうして、そんなに冷静でいられるの?」
「千晶」
「だって聞いたんでしょ、タカちゃんから。私が何のために、誰を探していたのか」
「…聞いたよ」
「だったら、どうして?あなたがここにいるってことは、そういうことなんでしょ?なのに、どうして?」
小山は、責める千晶をまっすぐに見ていた。


