ほど良く日に焼けていて健康的な、背の高い男。
一見するとコワモテだけれど、千晶は知っている。
笑うと、とてもやさしい顔になることを。
こんなに大柄なのに、圧迫感を与えない人柄であることを。
その男が今、雨に体を濡らしたまま、哀しげな目をこちらに向けていた。
(徹…―)
千晶は、その名前を口に出すことができなかった。
崇文の隣に座り、まっすぐに自分を見ているその男は、小山徹に間違いないのに。
それなのに、崇文は電話口で、まったく違う名前を口にした。
「マツダサトシって…あなたなの……」
そう言ったとき、急激な目眩が千晶を襲った。
千晶は、頭を抱えて膝から崩れ落ちた。
「……どうして……?」
どうして、こんなことに。


