ビルの外は空気が刺すように冷たく、見上げると、低い空に雲が広がっていた。

今日も雪になるかもしれない、と小山は思った。



「寒いですねー」

ヒュウッと音がして、いつものビル風が萌の髪をなびかせている。

「先週末みたいに、雪でも舞いそうだな」

道行く人々は、白い息を吐きながら肩を縮めて歩いていた。



「ここでいいですか?」

萌について行くと、ほんの数分歩いたところにあるカフェ風の店の前で立ち止まった。



(ここは…)

小山は思わず身を固くした。



「小山さん?」

この店には、入ってはいけない。

どこで誰が何を覚えているか、わからない今は。



「…やめよう、ここは」

ぶっきらぼうに言うが早いか、小山はもう先へ歩き出していた。