昼休みになると、萌が小山のもとへやって来た。
「室長、今日、ランチご一緒しませんか?」
いつものニコニコ顔で、千晶とは正反対のご機嫌な様子だった。
「あ、もしかして千晶の愛妻弁当とかあったりしますぅ?」
萌が冷やかしの眼差しで小山を見た。
小山は、あはは、と笑った。
こんな気分の日には、萌の軽口がありがたい。
「そんなもの作ってくれないこと、佐山さんだってよく知ってるじゃないか」
小山はそう言って、コートを手に取った。
「ランチ、ご馳走するよ」
「わーい!」
萌が弾むような足取りでエレベーターへ向かう。
そんな彼女を見て、小山の顔に、久しぶりに自然な笑みが浮かんだ。


