『鈴木さん…?』

やがて鈴木は、中西のショックを少しでも和らげたいという気遣いからだろう、普段どおりの口調で切り出した。

『…あー、お前の妹の婚約者。アレさ、誰だっけ、行方不明になってるっていう…』

『松田ですか』

『そうそう、それ。松田』

反射的に、中西の脳裏に礼子の顔が浮かんだ。



『…見つかったんすか?!』

『いや…いや違うんだ。早まるな』

部屋中の視線がふたりのもとへ向けられた。

中西の妹と松田の関係は周知の事実で、誰もが松田の行方を気にしていた。



鈴木は、周囲の視線を避けるように中西を奥の応接スペースに促し、

『とにかく座れ』

と言って、ゆっくりと、しかし言葉を濁すことなく、電話の内容を中西に告げた。