「…ママ…」 母は、愛娘の呼びかけにもピクリとも反応しない。 「ママ」 キッチンの中央、ちょうどダイニングテーブルの手前で、母は倒れていた。 その腕の中に、誰かいる…― (あれは…) 白い花模様の水色の生地に見覚えがある。 あれは、姉の冬用のパジャマだ。 (お姉ちゃん…) 母は、うずくまる姉に覆いかぶさるようにして倒れていた。 「お姉ちゃん」 少女と同じ、黒くて長い髪が、母の腕の間から伸びていた。 ママ、お姉ちゃん、ママ…― 少女は繰り返し、呼び続ける。