崇文の部屋にひとり取り残されると、少女は怖くなって部屋の明かりをつけた。
この部屋はさっきの部屋とは反対側にあるせいで、窓からは何も見えない。
外のざわめきが、いっそう気になった。
パトカーの数も増えて来たようだ。
「…ママぁ…」
向かいの家にいるはずの少女の家族に、何があったのか。
心細くなった少女は、自然に流れてくる涙を拭くこともせず、叔父の言いつけを破って部屋を出た。
真っ暗な2階の階段から下を見ると、廊下に明かりがついていた。
そこを行き交う人の足音も、常に聞こえている。
少女は、音を立てないように階段を少しずつ下りて、あと3段のところで立ち止まった。
目の前を行き来する制服姿の警察官たちは、暗い階段にたたずむ少女に目もくれず、慌しく通り過ぎて行った。
少女はそのまま段に腰をかけて、リビングから漏れ聞こえてくる話し声に耳を傾けた。
「―…とは、2階にいる子は、お向かいの家の次女、ということですね」
聞いたことのない男の声が、自分のことを話している。
「…もし、もし…がここに……ったら、あの子まで……」
叔母さんが声を絞り出すように言ったけれど、ほかの物音のせいでよく聞き取れなかった。


