アリスズ


 20日は、空も高く晴れ上がり、美しい天気だった。

 飛脚問屋の前には、物珍しさで大きな人だかりが出来ている。

 商家の者たちは、たいていが読み書きが出来るので、親戚などへの手紙を荷として預ける者が多い。

 豪商たちは、付き合いのある布問屋へのご祝儀代わりか、はたまた自分の栄華を誇示する見栄か、大きな物の配達を頼んでいる。

 遠くへ嫁いだ娘へ、親へ、親戚へ、領主へ。

 次々と、荷札がつけられていく。

 そして、仕分けされていく、

 荷馬車は四つ。

 それぞれの方角の、一番近い町まで往復する。

 そこから先は、次の問屋の荷馬車に受け渡されるのだ。

 最終的にたどりつく先は、四つの神殿。

 今回は、イデアメリトスのお方の計らいで、四神殿への当たり障りのない手紙も託されていた。

 これには、布問屋の主人も大喜びだった。

 必ずや、素早く届けて見せますと、鼻息も荒く誓ったのだ。

 事前に宣伝はされていたにせよ知らぬ者も多く、祭のような騒ぎに、どんどん野次馬が集まってくる。

 紙やペンを貸す商売を始める者が現れ、その場で手紙をしたためる者まで出る始末。

 人ごみの中に、シェローやその母親を見つけた。

 宮殿で知り合った学者や、マリスもいた。

 ちらっと景子が見えた気がしたが、見なかったことにする。

 本物だとしたら、絶対にお忍びだろうから。

 こんな人の多いところに出てくる正妃だ。

 護衛も大変だろう。

 ちょうど正午の出発が、次から次への大盛況で、なかなか出発出来ないでいる。

 ウメは飛脚問屋の中から、その混雑の光景を見ていた。

 隣にいるのは、ヤイクだけ。

 気がついたらエンチェルクは、荷の手伝いに走り回っていたのだ。

「大騒ぎだな」

 ヤイクが、理解できないという顔で言った。

「ええ、そうね…でも、これがそのうち当たり前のことになるのよ」

 夫人への手紙が届く日を、梅は心待ちにしている。

 いま。

 ここにいるみなが、自分と同じような気持ちなのだ。

 シャランシャラン。

 鈴が、高らかに打ち鳴らされる。

 人波をかき分けるように、ようやく荷馬車は進み始めた。