☆
「この西翼に、来ている者の名に目を通したが…」
冷ややかで厳しい声が、流れ始める。
景子はソファに向かい合って座ったまま、緊張でカチコチになっていた。
「ソレイクル16殿下の連れて来た貴方だけが、素性がまったくはっきりしていない」
あれ…。
景子は、言葉に嫌な汗が流れ始めた。
協力しようとして部屋に入れたはいいが、この質問の方向性は危険なのではないかと気づいたのだ。
「名も、いかにも異国の者としか思えない…一体、貴方はどこの国から来た何者なのだ」
『貴方』という言葉が、既に『お前』にしか聞こえなかった。
それほど、彼の声には疑いをはらんでいたのだ。
そりゃあ、私のところに来るわな。
名前も素性も怪しい。
そして、被害者であるロジューの側にいるのだ。
景子が直接犯人じゃないにせよ、手引きをしたと思われてもおかしくない状況だった。
その上。
この男に、『日本です』と答えたら、更に突っ込んで根掘り葉掘り聞かれるのは目に見えている。
どう、しよう。
状況は分かったものの、どこからどう答えていいか分からない。
その上、景子の事情を知る者も、味方も同じ空間にはいないのだ。
「ええと…私は、農林府の仕事をしています…」
とりあえず、思いついた言葉を挙げてみる。
この国の役所で働いている──それが、どれほどの威力を持つかは分からないが。
「農林府で?」
疑いを、まったく隠さない瞳だ。
「はい、リサー…ええと、ブエルタリアメリー卿の紹介で…」
長い名前に、舌が絡まりそうになりながらも、何とかそれを告げた。
「ふむ…それで、国は?」
ああ。
生まれの国について、忘れてくれる気はないようだ。
「ええと…ブエルタリアメリー卿のご子息に、聞いていただけますか?」
景子は。
ついつい、その問題をリサーに丸投げしたのだった。
「この西翼に、来ている者の名に目を通したが…」
冷ややかで厳しい声が、流れ始める。
景子はソファに向かい合って座ったまま、緊張でカチコチになっていた。
「ソレイクル16殿下の連れて来た貴方だけが、素性がまったくはっきりしていない」
あれ…。
景子は、言葉に嫌な汗が流れ始めた。
協力しようとして部屋に入れたはいいが、この質問の方向性は危険なのではないかと気づいたのだ。
「名も、いかにも異国の者としか思えない…一体、貴方はどこの国から来た何者なのだ」
『貴方』という言葉が、既に『お前』にしか聞こえなかった。
それほど、彼の声には疑いをはらんでいたのだ。
そりゃあ、私のところに来るわな。
名前も素性も怪しい。
そして、被害者であるロジューの側にいるのだ。
景子が直接犯人じゃないにせよ、手引きをしたと思われてもおかしくない状況だった。
その上。
この男に、『日本です』と答えたら、更に突っ込んで根掘り葉掘り聞かれるのは目に見えている。
どう、しよう。
状況は分かったものの、どこからどう答えていいか分からない。
その上、景子の事情を知る者も、味方も同じ空間にはいないのだ。
「ええと…私は、農林府の仕事をしています…」
とりあえず、思いついた言葉を挙げてみる。
この国の役所で働いている──それが、どれほどの威力を持つかは分からないが。
「農林府で?」
疑いを、まったく隠さない瞳だ。
「はい、リサー…ええと、ブエルタリアメリー卿の紹介で…」
長い名前に、舌が絡まりそうになりながらも、何とかそれを告げた。
「ふむ…それで、国は?」
ああ。
生まれの国について、忘れてくれる気はないようだ。
「ええと…ブエルタリアメリー卿のご子息に、聞いていただけますか?」
景子は。
ついつい、その問題をリサーに丸投げしたのだった。


