☆
ケーコ。
そんな、たどたどしい呼び方でも、相手に自分の名を伝えることが出来た。
その事実に、彼女はとても喜んだ。
そうなると次は。
自分の胸にあてた手のひらを、今度は子供ならざる者へと向けるのである。
あなたは、と。
不思議な不思議な猫目石のような瞳を持つ、子供のようで子供でないもの。
何か、特別な人であることしか、景子には分からないのだ。
子供ならざる者は、自分の胸に手のひらをあて、微かに首を傾けた。
自分の名前を聞いているのか。
そう、聞き返しているように感じた。
こくりと、彼女が頷く。
だが。
「──……」
その唇が、何かを発しようとした時。
ようやく落ち着いてきた女性が、二人のやりとりを見て、それを止めようとする。
剣で辺りを警戒していた男さえも、慌てて鞘に収めて割って入ってくるではないか。
何か、悪いことを聞いたのだろうか。
ただ、名前を聞いただけなんだけど。
違うことと誤解されたのかもと思い、景子はしょんぼりとしながら三人のやりとりを見ていた。
子供ならざる者は。
軽く首を横に振って、彼らの干渉をやめさせると、景子の方をまっすぐに見るのだ。
「アディマバラディム……──」
長く、長く音は続いた。
な、長い。
彼はもしかして、正式な名前を名乗っているのかもしれない。
景子のように名前だけではなく。
困った。
同じように復唱する自信がない。
こんなことなら、自分も苗字まで名乗っておけばよかったと、すっとぼけたことを考えていた。
あーあーあーあー。
景子の戸惑いを見取ったらしい相手が、もう一度繰り返す。
やはり、途中から覚えられない。
「あ…アディマ?」
それが、精一杯だった。
ケーコ。
そんな、たどたどしい呼び方でも、相手に自分の名を伝えることが出来た。
その事実に、彼女はとても喜んだ。
そうなると次は。
自分の胸にあてた手のひらを、今度は子供ならざる者へと向けるのである。
あなたは、と。
不思議な不思議な猫目石のような瞳を持つ、子供のようで子供でないもの。
何か、特別な人であることしか、景子には分からないのだ。
子供ならざる者は、自分の胸に手のひらをあて、微かに首を傾けた。
自分の名前を聞いているのか。
そう、聞き返しているように感じた。
こくりと、彼女が頷く。
だが。
「──……」
その唇が、何かを発しようとした時。
ようやく落ち着いてきた女性が、二人のやりとりを見て、それを止めようとする。
剣で辺りを警戒していた男さえも、慌てて鞘に収めて割って入ってくるではないか。
何か、悪いことを聞いたのだろうか。
ただ、名前を聞いただけなんだけど。
違うことと誤解されたのかもと思い、景子はしょんぼりとしながら三人のやりとりを見ていた。
子供ならざる者は。
軽く首を横に振って、彼らの干渉をやめさせると、景子の方をまっすぐに見るのだ。
「アディマバラディム……──」
長く、長く音は続いた。
な、長い。
彼はもしかして、正式な名前を名乗っているのかもしれない。
景子のように名前だけではなく。
困った。
同じように復唱する自信がない。
こんなことなら、自分も苗字まで名乗っておけばよかったと、すっとぼけたことを考えていた。
あーあーあーあー。
景子の戸惑いを見取ったらしい相手が、もう一度繰り返す。
やはり、途中から覚えられない。
「あ…アディマ?」
それが、精一杯だった。


