黒の三日月

「もう少ししたら放してやるから、それまで少しは我慢しろ」


こんな風にされて我慢なんて出来るかー! と後ろにいる男に心の中で叫んでみた。

それでどうなるって訳ではないけれど、そうせずにはいられなかった。

そんな言葉信じられるとでも? 男に頭突きをお見舞いしてやろうと思った次の瞬間には、

男の言うとおりになった。男は私を解放したのだ。

後ろを見ても自転車の白いライトがこっちに近付いているだけで、

人の気配は全くなくなっていた。すぐに逃げたのだろうか?

それにしては早すぎない? あの時と全く同じパターンだ。

襲われたと思ったらすぐに何もしないで解放する。何がしたいのかが全く分からない。