黒の三日月

「此処はもう思い切りぶつかっちゃって良いよ」


桜井さんがそう言うように、誰かが借りてきた片手で握れる剣をヒイラギ目掛けてふるった。

しかしお芝居とはいえ、よけられると相当腹が立つというもので、

私は更にムキになってヒイラギにまた振りかかる。

何度も何度もそれの繰り返し。桜井さんにやりすぎだと注意されるまでの間、

私は何度も何度もヒイラギに剣を振りかざして行った。

この剣がもしレプリカなんかじゃなくて真剣だったならば、どんなに良かった事か。

こうして剣でのやりあいも終わり一息つこうとしても、

その間もなく次の出番次の出番となり……何度も何度もやり直しを繰り返し。

落ち着いた時間が訪れる頃にはすっかり外は真っ暗になっていた。そんなに練習していたんだ?