黒の三日月

「夜見君がいなかったら紗千、大怪我している所だったね」


隣にいた優衣が言う。そうなんだけど、そうなんだけど……納得がいかない。

何でヒイラギは私を助けたの?

私はヒイラギを辛い目に遭わせようと誓った女なんだよ?

思えばあの時もそうだ。私に降りかかろうとしたコーヒーとかから助けてくれた。

……分からない。でも、お礼なんて絶対に言わない。言ったら負けだって気がするから。

でもこの空気の中ではお礼を言わざるを得ないようで。

ヒイラギにたった一言、周りに悟られない位の無愛想で、


「有難う」


と言った。心の中で“助けてなんて頼んでいないけどね”と呟きながら。