黒の三日月

ヒイラギは少しの間をおいてから、ブラックのホットコーヒーを頼んでいた。

……何も入れずにコーヒーを飲むなんて凄い、と思わずにはいられなかった。

それにしても、だ。


「何でケーキなの!?」


注文を受けたウェイトレスさんが厨房らしき場所へ戻って行くのを見てから、

私は間髪入れずに倉山へとムッとしながら言った。


「いや……あの、な。俺が食べたかっただけだ。
此処のケーキがずっと気になっていてな。
かといって俺だけで食べに来るのも恥ずかしかったから。
女の子とかいれば大丈夫かなー、なんて。迷惑だった?」


と、やや申し訳なさそうに恥ずかしげに言う倉山。