黒の三日月

何で倉山はヒイラギの腕なんか掴んで、


「夜見、少し付き合え。どうせ用事なんてないんだろ?」


と脅し文句を言っているんだろう?そして断れば良いのにそれに従うヒイラギって何。

女の子の誘いとかにも乗じなさそうなくせに。溜め息が出そう。


「……確かに悪いとは思っているけどさ」


私は今倉山に付き合わされて喫茶店にいる。

時間が時間なのか、そんなに混んでいるという訳でもなく、

だからと言って私達だけしかいない訳でもない。木の匂いが心地よく、

セピア色の空間。悔しいけれど活発な印象の倉山よりも、

落ち着いた印象のヒイラギの方がこの空間が似合っていると思う。


「この場所でムスッとするのだけはやめようよ」