黒の三日月

低いトーンの声は、まるで周りを凍りつかせてしまうよう。

私は瞬間に思った。殺される、と。そんなのは……絶対にお断りだ!

足で背後にいた男の足を踏みつけようとしたその時だった。

車が通った訳でもないのにブワッと突風が吹き荒れて、

私の口を塞いでいた手も背後に誰かがいる気配も、

最初から何もなかったかのようになくなっていた。

誰かが来たから逃げたという訳でもなければ、

勿論私が攻撃を仕掛けようとしたからいなくなった訳でもない。

私は誘拐されず、殺される事もなく無事だ。