黒の三日月

「うん。出来ているよー」


制服姿のまま、声の聞こえた方へと向かいそこで初めてお母さんと顔を合わせた。

お母さんは黒いワンピース姿でそこにいた。

着替えなくて良いのかと聞かれたけれど、着替える時間だって惜しいし、

制服姿を改めてお兄ちゃんに見せたいから、そのままで良いと断った。


「それじゃ、行こうか」


あらかじめ用意してあったコスモスの花を持って、歩いて15分ほどの所にあるお寺へ向かった。

その間、お母さんと私は今日のご飯の事とかお兄ちゃんとの思い出とか色々な事を話した。

話していると時間はあっという間に感じる。

もうなの? と驚く位に目的地のお寺に着いたような気がする。

桶で水を汲んでからお母さんより少し遅れてお兄ちゃんのお墓へ歩を進める。

そしてそこには一足早く付いていたお母さんが少し驚いたような顔をしていた。