黒の三日月

ホームルームが終わり、放課後。クラスの人達はその夜見君の元に殺到する。

私だってあの子達とは理由は違うけれど、彼の元へ押しかけたい気持ちはある。

でも今はそうする事も叶わない。大丈夫。

今すぐじゃなくても必ず押しかけて、2人きりになれる時間はやってくる。

沢山の人達に囲まれた夜見君をチラッと見れば、やや迷惑そうな顔をしている。

やっぱり押し掛けられるのは嫌だよね。転校生って一瞬だけのアイドルのようだ。

“ご愁傷様”と心の中で呟いて教室を去ろうとすれば、

優衣が自分も一緒にと私と一緒に教室を出た。

優衣曰く“今の紗千は放っておけないくらいに難しい顔をしている”から、

私を1人にする事は出来ないそうだ。