「信太〜何やってんの! こっち全然片付け終わってないじゃん。あっ、それ信太の昔の携帯?」


 信太は、あの悪夢の始まりだった嫌がらせメールを開いたまま思い出し、座っていたので、優子が覗き込んでしまった。


 優子は一気に青ざめて、


「それ、私のせいで……」


 優子に嫌な事を思い出させてしまった。


「優子のせいじゃないって、あの時も言ったろ! それに俺と優子にとって辛い記憶だけど、あの辛い日々があったからこそ、その分余計に幸せを感じる事が出来るだろ? 俺はプラスに考えて優子と生きて行きたい」


 そう言って優子を強く抱き寄せた。
 優子はあの時の様に大粒の涙をこぼし、うんうんと頷く。


「片付け、一緒にやろう!」


「そうだな。片付けさぼってたら、優子に殴られちまう」


「ひど〜い。私はそんなに凶暴じゃないもん。信太のバ〜カ」


 信太達は心から笑い合った。

 この先、何があっても、信じられるものが一つでもあれば乗り越えていけるだろう。

 信太の子供の頃からの夢だった、緑に囲まれた静かな場所で暮らす事に、優子は反対もせず、今こうして楽しそうに荷造りをしている。地元を離れるという事は、陽一達とも今までみたいにすぐ会う事は出来ないが、絆は変わらない。そして、何処に居ても真っ直ぐ生きて行こうと思う。


 窓から差し込む太陽の光は、いつも以上に明るく感じた。