あれから一年が過ぎ、陸は再びA県から東京に出た。

 そして貯金を使って探偵社を開設したのである。

「探偵社RIKU」だ。

 誰かを雇う余裕はないため、陸は一人で探偵稼業を始めた。

 一通の招待状によって、陸の人生も変わったということである。

 新たに独学で心理学を学びながら、持ち前の推理力で誰かを救いたいと強く思った陸の意思は固かった。

 そして今年も雪が溶け、暖かい太陽が陸を照らしている。



 それから三ヶ月後、夏真っ盛りに南の方角から不吉な風が吹いてくることになるとは、この時の陸には知るよしもなかった。しかしそれはまた別のお話しである。