「座間さ〜ん?」


 久代はベッドの下に向かって声をかけたので、思わず陸と木梨は声を出さずに笑った。
 ベッドの下に座間がいるはずもなく、次に三人で浴室を覗くと、

 キャーーーーーー!!
 真っ先に久代が叫んだ。
 浴室にはポールで首を吊り、明らかに死んでいる座間の姿があったのである。


「ざ、座間さん!」


 木梨はそう叫ぶと、目を逸らした。陸も一旦目を逸らしたのだが、もう一度座間を見ると、座間の首には備え付けのタオルが巻かれているようだった。そして足は、片方の靴下だけ履いていた。違和感を感じたのだが、久代は蹲り震えていたので、陸と木梨は久代を両側から支えると浴室を出た。

 陸は気になり座間の部屋を見回すと、座間が履いていた靴下と同じ模様の靴下が、片方だけ椅子の下に落ちていたことに気付いた。不自然に感じた陸はスタスタと椅子の下に屈むと、手で靴下を摘んだ。新品だな。自殺する人はよく新しい服に着替えてから死ぬと聞いたことがある。しかし座間さんが新しい靴下を履いたとして、どうして片方しか履かなかったのだろう? 


「陸君、一旦この部屋から出よう」


 陸が振り返ると、木梨が久代を支えたまま、青ざめた顔をしている。
 候補者三人は、座間の部屋を出ると溜息を吐き、なかなか言葉が出てこない。


「座間さん、どうして自殺なんか……」


 久代は自分の腕を擦りながら、震える声でつぶやいた。