「そういえば……飲みすぎたせいで、私達は何度もトイレに行ったっけ。険悪な雰囲気になってから、飲むペースが早かったしね。そんな感じで時間はあっという間だったから、相馬さんと私は、シャワーを浴びてから寝たかったこともあって、二人で部屋に戻ったの。その時『さっきのは本気だから』って私の目を見ずに云ってた。何だか相馬さんが恐ろしい人に思えたっけ。でもそれが最後の言葉になったんだよね……」


 話し終えた久代は、涙声になって俯いている。
 相馬が死んだことが悲しいのか、相馬を思い出して恐ろしくなったからか、判断はつかなかった。しかし、久代の話しを聞く以上、相馬が殺された動機は薄っすらと形になった気がする。屋敷と財産半分を巡る殺害動機……。ということは久代にも動機があるということだ。相馬の話しを聞いた木梨、座間、久代。この三人の中に犯人がいるのだろうか。

 陸は難しい顔をしていたのだろう、久代に訊かれた。


「陸? 相馬さんが殺されたことを推理しているの?」


「ああ、でもまだ何も分からないから、少しでも相馬さんの話しが訊きたかったんだ。ありがとう。そろそろ一緒に食堂へ行こうか?」


「うん……。でも私、なんかこの屋敷の人達が怖いな。黒岩玄蔵も例外じゃないけれど、さっきサロンで、磯崎さんや鶴岡さんの無表情見ていたら、とてつもなく怖くなって逃げ出しちゃった。だって人が殺されたり、死んでいたことを知っても全然驚いた様子ないし、それって冷静なのか感情がないってことなのか……」


 久代は首を傾げると身震いした。

 確かに久代の云う通り、この屋敷の人達は変わっている。普通の人間なら、殺人事件が起きるなんて非日常的なことがあれば、少なからず驚いたり、怖がったりするものではないか? まるでそんな人間の感情を失ったような態度。何か引っかかる。


「そうだね。とにかく何か食べないと。行こう久代ちゃん」