そして三日目の朝、すなわち数時間前、朝食を取り、サロンでテレビを眺めていた時だった。

 ニュースで、殺された相馬と同姓同名の二十一歳の女性が火事で死亡したと告げ、更に今朝六時頃、座間と同姓同名の六十七歳の男性が近所を散歩中、足を滑らせ川に転落し、死亡したという事故を告げた。どちらもやはり同じ県内で、この屋敷から近い距離で起こった事故だった。

 この立て続けのニュースで、とうとう座間はパニックになったのだ。そして屋敷の庭に飛び出した彼は、高田の遺体を発見したのである。高田の死体は俺が見たところ、死因は分からなかったが、出血したふうでもなく、絞殺された後もなかった。ただ眠っているような姿に見えたのだ。凍死? その死因がピッタリくるような気がするけれども、どうして凍死するに至ったかについても謎である。


 以上のことから、疑問点はたくさんある。
 まず、黒岩玄蔵とはどんな人物なのか?

 高田が偽者だったことは確実だが、他の候補者達と同姓同名の人間が、立て続けにこの屋敷から近い場所で死んだのは何故なのか? 偶然にしては奇妙だ。何か関係があるように思えてならない。そのうち、俺と同姓同名の人間も死ぬのだろうか……。

 次に、相馬は何故応接間で殺されたのか? 誰が犯人なのか。殺された理由は? 

 相馬とはこの屋敷で全員が初対面のはずだから、相馬の姿を最後に見た久代に、話しを訊く必要がありそうだ。

 では、高田は本当に帰ったのか? 
 磯崎や鶴岡の証言が事実ならば、高田は屋敷に戻ってきたのだろうか? 
 そして何故死んだのか、死因は? 
 他殺なのだろうか? もし他殺だとしたら犯人は誰なのか? 

 陸の頭の中は疑問符で埋め尽くされ、思わず両手で頭を抱え、髪の毛をくしゃくしゃにしながら「ん〜」と声を洩らした。

 その時ふと部屋の時計を見ると、もうすぐお昼になろうとしている。

 陸は情報収集する目的もあり、食堂へ向かう前に久代の部屋に行こうと決めた。