そして三人でサロンへ向かった。

 サロンに入ると、木梨が棚から高級そうなウィスキーとグラスを取り出しテーブルに置いた。

 候補者三人はソファに腰掛けると、久代が当たり前のようにテレビのスイッチを入れた。テレビの音声が流れているだけでも、いくらか日常に近いと思うことが出来た。何故ならこの屋敷は非日常の世界のようで、陸は底知れぬ不安を感じていたから。

 飲み始めたところでサロンの扉が開き、座間が入ってきた。少し落ち着いたのだろうか、最初に見た時と同じ顔色に戻っていたので、陸はいくらか安心した。


「皆さんここにいたんですか。やはり一人でいると色々と考えてしまって、余計落ち着きませんね」


 そう云って座間はソファに腰掛けた。


「このウィスキー、うちの店でも扱ってるけど超高いんだよ」


 久代が明るくウィスキーのボトル片手に説明した。


「俺がバイトしている居酒屋にはないなぁ」


「私なんて、見たのも始めてだよ」


 陸に続いて木梨もおどけてみせたので、場の雰囲気が生き返ったようだった。


「うちの会社の部長の家で見たことあるけど、部下の私達には飲ませてくれませんでしたよ。部長は瓶を見せるだけでしたからね」


 座間の話しに、残った候補者四人は久しぶりに笑い合った。