それから私達は軽く食事を済ませ、まだ突き刺すように冷たい夜空の下を歩き出した。

「わあ~、雪だぁ~!」

近くで小さな子供がそう叫ぶ声がする。

見上げると、イルミネーションの光で白んだ夜空から、ふわり、ふわりと雪が舞い降りてきた。

「素敵、ホワイトクリスマスだよ」

私はまた、明るい声を出した。

滅多に降ることのない雪が、今、私たちに優しく舞い降りる。そんな奇跡のような出来事に、彼も笑ってくれるに違いない……そう、期待した。

しかしその期待はあっさりと裏切られる。

彼は私の声にうるさそうに眉を潜め、ただ、白い息を吐いた。

──ああ……もう……

駄目だ。

奇跡なんか起きないのだ。

キラキラと輝く夢のような世界も、その中を歩いていく幸せそうな人々も、彼の目には何も映っていないのだ。

すぐ隣にいる、私でさえ。


彼から視線を逸らし、絶望に沈んでいく私の目に、夜空から舞い降りる白い雪を追う小さな子供の姿が映る。

毛糸の手袋をはめた小さな掌が、落ちてきた牡丹雪をそっと乗せた、その光景に。

ふと、昔の出来事が蘇った。