「っぶね!おい。どういうことだよ」
赤木君の顔が本格的に怒っている。
怖い…。
「ちゃんと説明しろよ」
怖い…。
「聞いてんのか」
怖い…。
「おい。空!!」
『空!!』
全身が震えた。
足がすくんだ。
涙が溢れた。
溢れて止まらなかった。
あたしはその場に座りこんで、泣いた。
「泣いたってなぁ…」
身体がびくっとなる。
「空?」
優しい呼び方で呼ばれてももうダメ。
今は聞きたくない。
あたしは両手で両耳を塞いだ。
「空…」
やだ。
赤木君が近づいてくる気配がした。
来ないで。
「ごめん…」
あたしの身体は赤木の腕の中に包まれた。
赤木君の匂いがした。
一瞬涙が止まった気がした。
「ごめん、空」
その声が頭の上で聞こえた瞬間、赤木君の胸を押して学校とは反対側に走り出した。
やっぱりダメだ。
今は名前を呼ばれたくない。
名前を聞いたら涙が止まらない。
震えが止まらない。