「そらー」
だから名前呼ばないで。
今日は赤木君に付き合う気分じゃなくて。
「そーらー」
呼ばれてもシカトした。
「そらちゃーん?」
だから呼ぶなっつの。
「おい。シカトしてんじゃねぇぞ」
さっきまでとは違って低い声が聞こえた。
「何…」
「何じゃねぇし。自分の立場わかってんのか」
「わかってるよ…」
「わかってねぇよ。逆らったら山下のこと好きだってバラすぞ」
なんかムカついた。
イライラを貯めすぎたのかな。
気が付いたら声に出てた。
「好きじゃない…」
「はあ?」
「准一のことなんて好きじゃない」
自転車を漕ぐのをやめて、振り返った。
赤木君はびっくりした顔をしていた。
でも振り返ったらやっぱり至近距離で。
それが嫌で自転車から降りた。
後ろに座っている赤木君に自転車を支えることは不可能で、
自転車は大きな音をたてて倒れた。

